第153話 Snowballs スノーボール

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okashi


<Snowball  スノーボール>

 

今日のお題は「スノーボール(雪の玉)」。味も材料も分からないけれど、きっと白くて丸いお菓子なのでしょうと姿だけは誰もが想像できる直球ネーミング。つまり誰もが思いつくシンプルな名前=同じ名を持つお菓子がいくつもあるということ。特にイギリスの中でも雪を連想しやすいスコットランドに多く見られるのですが、今日はそのスノーボールたちをいくつかご紹介していきます。

まずはイギリス人なら多くの人が知っているもっともメジャーなスノーボールから。黄色に赤のちょっとレトロなパッケージがアイコニックなTunnock社、ティーケーキ(ビスケット+ドーム状のマシュマロ+チョコレートコーティング)で有名なスコットランドのメーカーですが、スーパーの棚をよーく見ると似たようなパッケージの箱でSnowballs(スノーボール)と書かれたものも脇に置いてあるはず。こちらはシンプルに、大きな丸いマシュマロを薄くチョコレートでコーティングし、ココナッツをまぶしたもの。チョコレートの茶色が透けてはいるものの、雪の玉に見えなくはありません。同じくスコットランドの菓子メーカー、Lee’s のスノーボールも有名ですが、こちらは全国区で見つけられるタンノック社のものに比べると目にする機会はちょっと少なめ。いずれお味のほうはご想像どおり、子供たちがいかにも好みそうなふわふわ甘~いマシュマロ菓子です。

タンノック社のスノーボール、スーパーで見つけたら是非お試しを☆

タンノック社のスノーボール、スーパーで見つけたら是非お試しを☆

 

お次はスコットランド在住のベイキング好きならご存知、というスノーボール。「Scottish snowballs(スコティシュスノーボール)」とも呼ばれるこちらは、やはりココナッツを周囲にまとった丸い姿をしています。丸くころんと焼き上げたビスケットふたつをラズベリージャムで貼り付け、全体をアイシングに浸してからココナッツのなかでころがしたもの。ほろりとしたビスケットにラズベリージャムの酸味、そこにココナッツの食感が加わり、なかなか美味しいビスケットです。たまにビスケットではなくスポンジ生地バージョンのふんわりタイプも見かけますが、作りやすくより一般的なのはビスケットタイプ。子供の頃を思い出すような、そんな懐かしい味わいのお菓子です。

ラズベリージャムにココナッツが懐かしい味わいのスコティッシュスノーボール★

ラズベリージャムにココナッツが懐かしい味わいのスコティッシュスノーボール★

 

どれもそれなりに長く愛されているお菓子ではありますが、今日登場する中で一番の古株はこれからご紹介するスノーボール。「Apple snowballs(アップルスノーボール)」とも呼ばれるこれは、確かに見た目は一番雪の玉に近いような、でも握りたてのおにぎりにも見えるような、、という代物。Mrs.Beetonの Household Management(1861)はじめ、Eliza Acton著Modern cookery for private families(1845)や Everybody’s pudding book (1862)by Richard Bentley などなど、多くのレシピ本に登場しているので、ヴィクトリア時代にはそれなりにポピュラーなデザートだったのでしょう。
では気になるその作り方はというと~

牛乳で煮たお米+りんご、両方とも確かに白いけれど、、、雪の玉?

牛乳で煮たお米+りんご、両方とも確かに白いけれど、、、雪の玉?

まずは、牛乳または水で軽く茹でたお米で、芯を抜いたりんごをくるみます。それをひとつずつ布で包んで縛り、りんごが柔らかくなるまで30分から1時間ほど茹でましょう~というもの。ミセスビートンのレシピは芯を取り除いたところにお砂糖とクローブを詰め、前述のEberybody’s pudding book によるレシピでは茹でたお米に卵白を混ぜるなど、多少のバリエーションはあるものの、基本は一緒。丸ごとりんごのライスボールです。味付けはほんのちょっぴりのお砂糖、場合によりクローブかシナモン少々が加わるのみなので、素材の味そのまま。はて、いかなるお味なのか。。。怖いもの見たさでちょっと食べてみたくなりませんか?わたしも興味津々。
The proof of the pudding is in the eating. さぁ、新しい味に出会えるチャンスです(笑)。

さぁ ヴィクトリア時代のスノーボールはどんなお味?

さぁ ヴィクトリア時代のスノーボールはどんなお味?

では、いざ実食。
ふむ、、思っていたより不味くない(失礼)。というか固定概念を払いのけて食せば意外とありかもしれません。りんごの甘味がお米に染み込み、全体が優しい甘さ、おはぎの具が丸ごとりんごになったようなイメージです。ライスプディングが嫌いじゃなければ、きっと大丈夫。ただ、りんごにお米なので、かなりの食べ応え、これ一つ食べたら一食分くらいの満腹感は得られそうです(笑)
Eliza Acton さんレシピによると、ここにバターとお砂糖、シナモンを混ぜ合わせたものを添えていただくことになっているので、もう少しデザート寄りの気分で食べられるかもしれません。もう一つ勇気を振り絞って、絶対これはないな、と思っていた彼女のオレンジバージョンスノーボール(Orange snowballs)のレシピも試してみようか、、、そんな気にもなれるお味なのでした。

これら以外にもスノーボールという名のイギリスお菓子、探せばいくらでも出てきそうですが、今日のところは有名どころ3種のご紹介でした。さぁ、この中で一つ選ぶとしたら、皆さんのお好みの雪の玉はどれでしょう?

 

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About Author

宮城県仙台市出身☆ 2008~2012年イギリスにてイギリス文化&イギリス菓子を大吸収するかたわら、日本で主催していたお菓子教室をつづけていたところ、あぶそる~とロンドンの編集長に出会う。 現在の居は巡りめぐって宇都宮。イギリス菓子教室 'Galettes and Biscuits' にてイギリス菓子の美味しさ&魅力を静かに発信中☆ 2018年2月 美味しいイギリス菓子をぎゅ~っと詰め込んだレシピ本「BRITISH HOME BAKING おうちでつくるイギリス菓子」、2018年 12月 「イギリスお菓子百科」。2020年12月「ジンジャーブレッド 英国伝統のレシピとヒストリー」、2021年9月「British Savoury Baking 古くて新しいイギリスのセイボリーベイキング」 を出版。インスタグラム@galettes_and_biscuits

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