第186話 Nut loaf cake ~ナッツローフケーキ~

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<Nut loaf cake ナッツローフケーキ>

 

9月、まだまだ暑さの抜けない日本と違い、イギリスには秋が駆け足でやってきます。
プラムやいちじく、洋なしやりんごなど秋のフルーツが熟し、田舎道を歩けば真っ黒に色付いたブラックベリーやエルダーベリーがたわわに実り、よく見ると足元にはヘーゼルナッツ(コブナッツ)が落ちていることも。日本でも秋になれば栗やクルミ、栃の実などは目にしますが、ヘーゼルナッツのなる様子はなんだかとても新鮮。薄緑色から茶色のへたのようなものに包まれたそれは、殻を割って生のままでも食べることができます。

秋は実りの季節

楽しい遊びや情報に溢れている今の時代、どれだけの子供たちがこの落ちているナッツに興味を示すのか分かりませんが、昔の若者たちにとって、ナッツ拾いは実益も兼ねた秋の楽しいイベントの一つ。

特に9月14日(旧暦の9月3日)はNutting Dayと呼ばれ、若者たちが集いナッツを集めに出掛ける風習がありました。けれど、ナッツが実る時期というのは分かりますが、何故9月14日なのか、、、
一説によるとその始まりは1560年のイートンカレッジにあると言います。‘The Hedgerow Apothecary (2019) Chrisine Iverson著’によると~Holy Cross Day(十字架拳栄祭)でもあるこの日、イートンカレッジでは半日学校がお休みになるため、生徒たちがナッツ集めを楽しんだのだそう。そこからこの日にナッツ集めをする「Nutting」の風習が始まり、広がっていったのだとか。

そしてもうひとつ、Nutting Dayといつも対のように語られるのが9月21日の Devil’s Nutting Day。この日は反対にナッツ拾いに行ってはいけない日。何故かというとこの日は悪魔がナッツを拾いに来る日だから。以前とりあげた10月10日の Devil’s Blackberry Day (この日以降ブラックベリーを摘んではいけないと言われている)を思い出しますね。
また、9月21日ではなくとも、日曜日にはナッツ拾いに行くものではない、とも言われています。それは、日曜日には紳士の姿に化けた悪魔が一番上の枝を採ってあげようとそそのかし近づいてくるから。これは安息日でもある日曜に教会にも行かず林をウロウロしているような者には罰が当たるという戒めもあるそうですが、昔から何かとナッツ拾いと悪魔は関連づけられているようで、イギリスには他にも悪魔とナッツに関する迷信がいくつも存在します。

例えば、Warwickshire のAlcesterそばには Devil’s Nightcap(=寝る時に被るとんがり帽子)と呼ばれる丘があり、そこにはこんな言い伝えが~
或る年の9月21日のこと、せっせと悪魔がナッツ集めていると、林の中でばったり出くわしたのが、なんと聖母マリア。動転した悪魔はナッツを入れていた袋をその場に落として逃げ出してしまいました。その袋が今のデビルズナイトキャップヒルと呼ばれる丘になったのだとか。。

 

豊穣に感謝し祝う 秋のケーキ

一年の努力が実る収穫の秋、村や町ではそこここでフェアやウェイクと呼ばれる祭りが催されてきました。教会は花や果物、麦の穂を模したパンやコーンドリーと呼ばれるわら細工などで飾られ、最後の収穫を終えた農場では豊穣への感謝と来年への祈りを込めて、また一年の労働へのねぎらいを込めてご馳走でお祝いをします。そんな折によく作られたというナッツたっぷりのローフケーキ。きっと家ごとに自慢のレシピがあったことでしょう。

ここではシンプルな材料で簡単に作れるナッツローフケーキのレシピをあげておきます。
温かい紅茶の美味しくなる季節、秋のティータイムのお供にお試しください☆

 

シンプルに美味しいナッツローフケーキ

 

<ナッツローフケーキ>

  1. 室温で柔らかくした無塩バター175g微細グラニュー糖175gを加えて白っぽくなるまで、泡だて器またはハンドミキサーでよく攪拌します。
  2. 室温に戻した卵3個を少しずつ加えさらに攪拌します。
  3. 薄力粉225gベーキングパウダー小さじ2塩一つまみを合わせてふるい入れ、粉っぽさがなくなるまでゴムベラで混ぜます。最後に刻んだミックスナッツ(ヘーゼルナッツ、クルミ、アーモンドなど)100gを加えて混ぜたら生地の完成。
  4. オーブンペーパーを敷いた2パウンドローフ型(900g入るパウンド型)に生地を入れて、170℃に予熱したオーブンで60分程焼きます。
    (オーブンによって焼き時間は異なるので、竹串を刺してチェックしてください。)
  1. デコレーションをするときは~
    水をほんの少し加えて温めたアプリコットジャムを刷毛で塗り、ナッツを貼りつけ、さらに上からもう一度ジャムを塗りナッツを固定します。

 

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About Author

宮城県仙台市出身☆ 2008~2012年イギリスにてイギリス文化&イギリス菓子を大吸収するかたわら、日本で主催していたお菓子教室をつづけていたところ、あぶそる~とロンドンの編集長に出会う。 現在の居は巡りめぐって宇都宮。イギリス菓子教室 'Galettes and Biscuits' にてイギリス菓子の美味しさ&魅力を静かに発信中☆ 2018年2月 美味しいイギリス菓子をぎゅ~っと詰め込んだレシピ本「BRITISH HOME BAKING おうちでつくるイギリス菓子」、2018年 12月 「イギリスお菓子百科」。2020年12月「ジンジャーブレッド 英国伝統のレシピとヒストリー」、2021年9月「British Savoury Baking 古くて新しいイギリスのセイボリーベイキング」 を出版。インスタグラム@galettes_and_biscuits

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