第54話 Poor knights of Windsor~プアナイツオブウィンザー~

0

okashi


<Poor knights of Windsor プアナイツオブウインザー>

突然ですがクイズです☆ Gypsy toast、 Eggy bread、Pain perdu、Poor knights of Windsorこれらは全て同じものを指す言葉。さらにはGerman toast、Spanish toastなどと呼ばれていた時代もあるという、パンを使って作るある甘いものはな~んだ?
ジプシーのトースト?ドイツの~?スペインの~?どうにも出所不明な感じですが、日本でも近頃人気のあれです、そう「フレンチトースト」。ちょっと古くなってしまったパンを美味しく変身させるお手軽な方法としてイギリスでもお馴染みの存在なのですが、イギリスではこれまで実に様々な名前で呼ばれてきました。poor knights 1

例えば「The compleat cook(1658)」には poore knights の名で登場。そのレシピは~卵に砂糖とナツメグ、クリームを加えたカスタード液にパンを浸してバターで焼き、ローズウォーターとお砂糖、バターを添えてサーブしましょう~ローズウォーターというのがいかにも昔風でいいですね。一方フランス的なPain perdu という名を使っているのはHannah Glasse著の「The art of cookery made plain and easy(1747)」~フレンチロールを指の太さほどの厚さにカットし、クリーム+牛乳+お砂糖+シナモンに浸し、パンが柔らかくなったら溶き卵にくぐらせ、こんがりするまで澄ましバターで焼きましょう~となっています。パンが焦げ過ぎないようにきちんと澄ましバターで、となっているところなどかなり丁寧。それにしても「poor knights (貧しい騎士)」なんてフレンチトーストにつけるにしては妙な名前ですよね。でも実はこんな名で呼ばれているのはイギリスだけではないのです。ドイツや北欧でもそれぞれ「貧しい騎士」を意味するarme ritter(ドイツ)、fattiga riddare(スウェーデン)、arme riddere(ノルウェー)という名がフレンチトーストに使われています。イギリスのものはある時からこの名前に「ウインザーの~」という語が付け加えられ、材料にはイギリス人の好きなシェリー酒も加わり「Poor knights of Windsor」というちょっと長い名前の大人味のフレンチトーストとなり今に至っています。(もちろん普通のアルコール無しのオーソドックスなフレンチトーストもありますよ。)

シェリー酒の利いたフレンチトーストはどんなお味?

シェリー酒の利いたフレンチトーストはどんなお味?

ところでイギリスで言う「poor knights」という単語にはもともとフレンチトーストとは別の意味があります。時代は1346年の北フランスのクレシーの戦いにまで遡ります。このフランス軍との戦いに私財を投じて参戦し、結果、経済的貧困に陥ってしまった騎士たちを救済するために、エドワード三世が結成した勲騎士団のことを当時poor nights と呼んでいたのです。恩給を与えられ、ウインザー城への居住を許されたこの騎士たちの制服は有名なバッキンガムパレスの衛兵と一緒で真っ赤。poor knights of Windsorに赤いジャムを添えることが多いのはこの制服の色から来ているともいわれています。退役された方々で結成される今のMilitary knights of Windsor。いかにもシェリー酒がお好きそうな方が多いですから、ここで供されるプアナイツオブウインザーはアルコール割合が相当多いに違いない~なんて勝手な想像ですが(笑)。それはともかく、程よい量のシェリー酒を加えたフレンチトーストはなかなか乙な味。簡単に出来ますから是非一度お試しを。休日のブランチに用意したらpoorどころかなかなかリッチなテーブルになること請け合いです☆

*プアナイツオブウィンザー* (何枚分出来るかは食パンの乾き具合次第、、、)

生クリーム大さじ3、卵2個、ミディアムまたはスイートシェリー大さじ2、お砂糖大さじ1を混ぜ合わせ、(できればちょっと乾きめの)食パンを浸します。バターを溶かしたフライパンでこんがり焼いて、仕上げにシナモンシュガーやジャムを添えて召し上がれ☆

Share.

About Author

宮城県仙台市出身☆ 2008~2012年イギリスにてイギリス文化&イギリス菓子を大吸収するかたわら、日本で主催していたお菓子教室をつづけていたところ、あぶそる~とロンドンの編集長に出会う。 現在の居は巡りめぐって宇都宮。イギリス菓子教室 'Galettes and Biscuits' にてイギリス菓子の美味しさ&魅力を静かに発信中☆ 2018年2月 美味しいイギリス菓子をぎゅ~っと詰め込んだレシピ本「BRITISH HOME BAKING おうちでつくるイギリス菓子」、2018年 12月 「イギリスお菓子百科」。2020年12月「ジンジャーブレッド 英国伝統のレシピとヒストリー」、2021年9月「British Savoury Baking 古くて新しいイギリスのセイボリーベイキング」 を出版。インスタグラム@galettes_and_biscuits

ウェブサイト ブログ

Leave A Reply

CAPTCHA