<Apple dappy/ Devon flat アップルダッピー/デヴォンフラット>
前回りんごの名産地として名高いサマセットとドーセットのアップルケーキをご紹介しましたが、もうひとつ、ウエストカントリーのりんごを使ったお菓子の中でどうしても触れておきたいお菓子があります。その名は「Apple dappy(アップルダッピー)」。ケーキと言おうか、プディングと言おうか、はたまたスコーンの仲間のようでもあるし~という曖昧なところにポジショニングしているのですが、まず見た目はこんな感じ。
シナモンロールのような、イギリス風に言えばチェルシーバンズのような姿をしています。生地はほぼスコーンと一緒。イーストではなくベーキングパウダーで膨らませる生地です。その生地で角切りにしたりんごをこれでもかと大量に巻き込み、ロールケーキのようにカットして並べて焼いたもの。ですから味はりんご入りスコーンのようでもあり、生地より多いのではないかと思うほどの量のりんごのせいでアップルケーキのようでもあるのです。しかもこれには、ただ表面にデメララシュガーをふって焼くタイプと、レモン風味のシロップをひたひたになるほどかけて焼くタイプの2タイプがあり、後者となると、スコーンというよりはスプーンで食べるプディング。焼き立てに、カスタードソースをたっぷりかけていただけば、焼けたりんごにレモンの風味も加わわり、もう格別。アップルダッビーを前にスプーンを握っていると、イギリス菓子が好きで良かった~と心底思います(笑)シロップなしバージョンもクロテッドクリームを添えていただけばなかなかですし。
ただ、このアップルダッピー、前回のサマセット&ドーセットのアップルケーキ同様調べてもあまりバックグラウンド的なもの見えて来ない。デヴォンシャーアップルダッピーと呼ばれることもあるので、デヴォンでよく食べられてきたのは間違いないのでしょうが、ヴィクトリア時代からあるという人、1980年以前の本にはどこにも出て来ないという人さまざま。名前も然り、「Dappy =お馬鹿さん、間抜け」なんて可愛そうな名前がつけられているのも何故なのか分からない。もしかしたら他の意味があるのかもしれないし、、、ということで、あまりこれ以上語ることはできないのですが、皆さんのイギリス菓子整理ダンスの片隅にでも「アップルダッピー」君、南西部のタグをつけてしまっておいてください。いつかアップルダッピーブームが来るかもしれないし!来ないか、、、なら起こしちゃう?~なんてダッピーな話しはこの辺にして、、。
毎回ひとつのお菓子について書いていると、そこから連想ゲームのように「次はこれを書こう!」というお菓子が浮かんでくる、エンドレスなこのおかし百科、今日はデヴォンついでにもうひとお菓子、「Devon flat (デヴォンフラット)」にも言及しておきましょう。
デヴォンフラットは、その名もデヴォンの平たいお菓子。デヴォン名物クロテッドクリームをバター代わりに使用した薄いスコーンのような、ソフトなビスケットのような食感の地方菓子です。バターより日持ちのしないクロテッドクリーム、さぁどうやって食べ切りましょう~なんてデヴォンの日常の中で、アップルダッピー同様きっと自然と生まれた家庭のレシピなのでしょう。あまりに簡単に出来るので、レシピを載せておきますね。クロテッドクリームはまだまだ高級品の日本、食べ切れなくてさぁ困った~なんて悩みはあまりないとは思いますが、万が一買い過ぎちゃったけれど、どうしよう~なんて時にでも是非作ってみてください。
<デヴォンフラット>
① 薄力粉225gにベーキングパウダーを小さじ2、塩ひとつまみを加えてボールにふるい入れ、グラニュー糖100gも加えて混ぜておきます。
② ①のボールにクロテッドクリーム100gを入れてゴムベラやカードで切るように混ぜていきます。次に卵1個を溶きほぐして加えて生地をひとまとめにします。水分が足りないようであれば牛乳大さじ1を加えましょう。
③ めん棒で生地を約7mmの厚さに伸ばし(必要であれば打ち粉を使って)、直径7.5cm位の丸型で抜きます。210℃に予熱したオーブンで10分ほど焼き、軽く焼き色が付いたら完成です。
バターとはまた違う、クロテッドクリームのミルクっぽさがふんわり香る優しい味わいのおやつです。生地をオーブンに入れたら、いつもおいしいクリームやバターを分けてくれる牛さんたちにたまには感謝をしつつ、紅茶の準備をしましょうか。焼き時間はたったの10分、あっという間にオーブンからはいい匂い~。