<Eve’s pudding イヴズプディング>
イヴのプディング。ちょっと意味ありげなこの名前は、大方のご想像どおり旧約聖書の創世記に登場する「アダムとイヴ」のイヴから。彼女が手にしてしまった禁断の果実 「りんご」を使ったプディングなので 「Eve’s pudding」。イギリスにはりんごを使ったプディングは数多あれど、特にこのプディングにEveの名が冠されているということは、なにか特別な魅力でもあるのでしょうか。
オーブンからでてくるのは大きな耐熱容器に入れて焼かれたケーキ風のもの。とりあえず、りんごの姿は見えません。「それでは~」と、スポンジにスプーンを差し込むと~甘い湯気と共に立ち上がるのはりんごの甘酸っぱい香り。ふわふわのスポンジの下から柔らかくとろりと煮えたりんごが現れます。果汁の染みたスポンジをりんごと共に取り分けたら、温かいカスタードをた~っぷり。これはもう誰でも自然と笑みがこぼれてしまうプディングです。かりっと焼けたトップ、バターの香るふんわりとしたスポンジ生地、一番下にはりんごの染みたしっとりプディング状の部分と、ひとつでいくつものテクスチャーが楽しめるイヴズプディングは、素朴な見た目からの驚きが嬉しいお菓子。煮崩れしやすいブラムリーアップル(調理用りんご)を使えばさらに、とろとろのソース状のりんごが楽しめます。
さて、このイヴズプディング、1800年代にはもう人気のあったプディングということですが、当時の姿は大分現代のイヴズプディングとは違うようです。というのも当時はオーブンが一般家庭に普及するもっと前。家庭での調理は大鍋でボイルしたり、直火でグリルしたりという調理が主流だった時代。当然プディングもスチームあるいはボイルドタイプが主だったため、イヴズプディングも時間をかけて蒸しあげるというものでした。
Mary Eaton 著「The Cook and Housekeeper’s Dicitionary(1823)」や1880年頃に出版された「Cassell’s Dictionary of Cookery」の中に登場する 「Mother Eve’s pudding」のレシピは大体こんな感じ『スライスしたりんご、よく洗ったカランツ、パン粉、そしてスエット(牛のケンネ脂)をそれぞれ12オンスずつボールに入れます。そこにレモンの皮半個分と卵4つを加えてよく混ぜ合わせます。バターを塗った型に生地を入れ、3時間ほど蒸し茹でに。一緒に添えるソースは、甘みを加えた1/4パイントの溶かしたバターに、レモン果汁、シェリーそしてナツメグで風味をつけたもので』。
それがいつしか、オーブンやバターが庶民にもっと身近なものとなると共に、今のような姿に変化を遂げたということでしょうか。時代による材料や調理法の変化、それに嗜好の変化も加わって今のイヴズプディングになったのなら、さらに何十年か後の姿も是非見てみたいもの。真空調理に液体窒素調理、分子ガストロノミーとやらで変身したイヴズプディングはどんな姿をしているのやら…願わくばあまり変わっていませんように…。今でも充分イヴを魅了する美味しさですから。
2件のコメント
MOMO さん☆
今の今までコメントに気づかなかったわたしをお許しください~。
イヴズプディング、ブラムリーで作るとさらにおいしいですよね、というか本当はいつでもブラムリーで作りたい。。。
これが日曜日のランチだったら最高ですね、りんごと一緒にブラックベリーなどを入れてもまた別の美味しさなので、いつか是非試してみてください♪
はじめまして。いつもお菓子の記事があがるのを楽しみにしています。
こちらで初めて知ったリンゴたっぷりプディング。ずっと食べたかったのですが、レシピが手に入ったので、本日初めて作ってみました!
ブラムリーアップルを使ったので、トロトロに溶けた果汁がスポンジに浸みて、めっちゃ美味しい!
日曜日のちょっとリッチであまーいお昼ご飯になりました♪