<Cornish fairing コーニッシュフェアリング>
イギリスの南西端コーンウォール地方の名物菓子「コーニッシュフェアリング」。数あるイギリスジンジャーブレッドのひとつです。
フェアリングとはもともとフェア(お祭り)で売られる食べ物全般(お土産品なども含めて)を指す言葉。それがいつの間にかお祭りで人気だったジンジャーブレッド(ジンジャービスケット)のみを指すようになります。ただ、フェア自体はイギリス各地で行われているもの、当然フェアリングもコーンウォールに限らずイギリス中で売られているものでした。それがいつの間にか「フェアリングと言えばコーンウォール」と言われるまでになったのか、、、。
そのきっかけは1886年、John Cooper Furniss という人物が売り出したフェアリングにあります。コーンウォールのTruroにある彼のティールームで販売されたそれはその美味しさにコーンウォール名物として瞬く間に有名に。ついにはメールオーダーで遠くの人々に発送されるまでに人気を博します。それから120年以上も経ちますが、今もなお furnissのオリジナルフェアリングとして、 Furniss Food はコーンウォールでフェアリングを作り続けています。メールオーダーはもちろん、今ではイギリス中のスーパーマーケットの棚にも見つけることができますので、彼の地まで行かずともオリジナルの味を楽しむことができます。
コーニッシュフェアリング、名前は聞きなれないかもしれませんが、要はジンジャービスケット、生地作りはとっても簡単です。小麦粉やお砂糖、ジンジャーやミックススパイスなどのスパイス類、それらとバターを合わせてrub in(指さきで全体をパン粉のようなさらさらの状態にすること)したらあとは温めたゴールデンシロップで全体をまとめるだけ。それをくるくる丸めてオーブンに入れればもう完成ですから。
イギリスはジンジャーもののビスケットにあふれている国。「ジンジャースナップ」「ジンジャーナッツ」などと呼ばれる他の一般的なジンジャービスケット類とコーニッシュフェアリング、実は結構似ていたりします。表面がひび割れた姿も一緒。でもコーンウォール土産といえばフェアリング。クロテッドクリームファッジと並んで大定番のおみやげ品ですから、何か違いを頑張って見つけるとすると~それは使用するスパイスの量かも知れません。コーンウォールはもともとイギリスのスパイス貿易の玄関口。船で着いた商人たちが小遣いを稼ぐためにその場で売り買いをすることもあり、他の地域よりも早く中流層までスパイスが広まっていました。そのためスパイスを使ったお菓子が多いのがこの辺りの特徴のひとつなのです。
旅行はおろか村を離れることもそう簡単なことではなかった時代、日常と違うワクワクした世界が現れる年に一度のお祭りで、スパイスたっぷりのフェアリングを食べながらそぞろ歩く楽しさ。相手の笑顔を想像してお土産に買いもとめる嬉しさ。決して想像に難くありませんね。