<Fat rascal ファットラスカル>
「Fat rascal= 太っちょのいたずら坊や」そんなキュートな名前を持つお菓子がイングランド北部、ヨークシャー地方にあります。名前のとおり重量感たっぷり、食べ応えたっぷりの焼き菓子で、食感はロックケーキとスコーンの中間といったところ。
大抵たくさんのカランツやオレンジピールなどのドライフルーツとスパイスが入っており、スコーンと比べると大分豪華ですが、19世紀頃までは今と比べるとかなり質素なお菓子だったよう。当然、「太っちょ」でもありませんからその当時の名前はファットラスカルではなく「Turf Cake」。Turfとはピートとも呼ばれる泥炭で当時の燃料のこと。パイやタルトで半端に余ってしまったペストリー生地にドライフルーツや砂糖を加えて、その日最後の残り炭(turf)で焼いたものでした。それが20世紀に入り少しずつリッチな配合になっていき、いつしか「ファットラスカル」と呼ばれるようになったのです。 ただし、1980年になってもまだまだ地味な一地方菓子であることには変わりありませんでした。それが1983年、とあるティールームのおかげで一躍全国にその名を知られるお菓子となります。
そのティールームというのが、ヨークシャー地方はハロゲイトに本店を持つティールーム「Bettys」。ある時、ファットラスカルという可愛らしい名前に合わせていたずらっ子のような顔のデザインにして売り出したところ大人気。瞬く間に看板商となったのです。チェリーのつぶらな目に縦に3つ並んだアーモンド、いたずらっ子がニヒヒっと何かを企んでいる表情なんだそう(笑)。ベティーズでオーダーすると、軽く温めたファットラスカルにバターが添えられて提供されます。とても大きいのでひとつでお腹いっぱい大満足☆シーズンによって、もうひとまわり小さめでニコッと笑ったオレンジとチョコレートフレーバーのリトルラスカルや イースターバージョンのスパイスの効いたラスカル(こちらは顔がついていないので見逃さないように☆)などと出会えることも。
またYorkshire teaで有名なTaylors of Harrogateもベティーズと同じ経営。紅茶も美味しい、お菓子も美味しいBettysは今ではイギリス中のティールームファンが一度は訪れたいと憧れるティールームです。ヨークシャーの地にこだわりを持つベティーズは、この地方内に6店舗を構えるものの、その他の地域には出店をしていません。どうしても食べたい時はヨークシャーまで赴くか、イギリス国内なら地方発送という手も。今もなおハロゲイト近くのファクトリーで手作りの味を守り続けているベティーズ。毎朝暗いうちからその日の分のパンやケーキを焼き上げ、フレッシュさをとても大切にしています。ここを見学をさせてもらった際、ファクトリーの人がいろいろ説明をしてくれながら「ここで働けて本当に幸せなんだ」と言っていた言葉が忘れられません。
またヨーク地方に行けば、もちろんベティーズ以外のベーカリーやティールームでもファットラスカルをそれぞれ自慢のレシピで提供していますので、それらを食べ比べてみるのもなかなか楽しいものです。
でも気をつけて☆美味しいからとあまり食べ過ぎているとファットラスカルみたいになっちゃうかも(笑)