<Hot cross buns ホットクロスバンズ>
日本ではあまり馴染みのない「イースター」ですが、キリスト教においてはクリスマスと並んで最も重要な日のひとつ。日本語にすると「復活祭」となり、イエス・キリストが磔になって亡くなった3日後に復活を遂げた日のこと。
このイースターは毎年必ず春分の日のすぐあとの満月の次の日曜日となっているため、イースターサンデーとも呼ばれます。そしてイエスが弟子のユダの裏切りにより十字架にかけられた金曜日は「グッドフライデー(聖なる金曜日)」、翌日の月曜は「イースターマンデー」と呼ばれ、イギリスでは数少ない連休となります。
このグッドフライデーに食べるのが「ホットクロスバンズ」。レーズンやオレンジピールなどのドライフルーツ、そしてミックススパイスの入ったバンズ(小型のパン)で上部にクロス(十字)が入っているのが特徴です。半分にスライスしてトーストしバターをたっぷり塗っていただくのがイギリス人は大好き。その美味しさから、今では1年中スーパーに並んでいますが、イースターシーズンにはスペシャルバージョンとして「アップル&シナモン」やら「クランベリー&デーツ」やらなんだかとっても美味しそうな響きのホットクロスバンズが山積みに。。。
その歴史は古く1361年にSt Albans のThomas Rocliffe という修道士がグッドフライデーに表面にクロスの入ったスパイス入りのパンを貧しい人々に配ったというのが始まりだとか(ホットクロスバンズという名で文献に登場するのは18世紀に入ってからのようですが)。当時グッドフライデーには町でホットクロスバンズ売りがこう歌っていたそうです。
Hot cross buns!
Hot cross buns!
One a penny, two a penny,
Hot cross buns!
If you have no daughters,
Give them to your sons,
One a penny,
Two a penny,
Hot cross buns!
ホットクロスバンズ!ホットクロスバンズ! 一個1ペニーだよ、いや2個1ペニー
ホットクロスバンズ!娘がいないなら息子におあげ
一個1ペニー、いや2個1ペニーだよ ホットクロスバンズはいかが!
今ではナーサリーライム(マザーグース)として有名ですね。
他の宗教行事と関わりのあるお菓子同様、ホットクロスバンズにも様々な言い伝えがあります。
例えば、、、「グッドフライデーに焼かれたホットクロスバンズは決してかびない」とか「ホットクロスバンズを粉にして病人に与えると病気が治る」などなどこの日に焼かれたホットクロスバンズには聖なる力、特に悪を寄せ付けない力を持つとされていたため、「台所に下げておくとその1年火災から守ってもらえる」「船に持ち込むと難破しない」~なんていうものまで。
また、イエスの十字架を表しているという表面のクロスは細長くカットしたペストリーをのせるか、小麦粉を水で溶いたものを絞って模様をつけるのですが(昔は十字に切り込みを入れているだけだったようですが)、グッドフライデーにパンを焼くときこのクロス模様をつけないと決して膨らまない~という言い伝えもあります。
とにかくホットクロスバンズに関する言い伝えは枚挙に暇がないのですが、現在のように1年中売られるようになってしまうと、そういった話しもだんだん消えていってしまいそうですね。クリスマスが終わると同時にイースター商戦が始まる今のイギリス。1月に山と詰まれたホットクロスバンズを前に、このご時世、言い伝えやら古臭い伝統より美味しいのだから1年中買えた方がいいに決まっているという人、文化を大事にしてイースターシーズンにだけ売るべきだという人、せめてイースターシーズン以外はクロス模様はつけずに ‘ not cross buns’ にして売ればいいんじゃない?なんてうまいこと言っている人、喧々諤々なようです(^^;)「ノットクロスバンズ」・・・案外悪くない折衷案の気もしますけれど、、、。
そうそう、ホットクロスバンズ好きなら一度訪れてみたいパブがEssexのHorndon-on-the-Hillにあります。15世紀から続くパブ The Bell Inn の天井に浮かぶのはなんと無数のホットクロスバンズ。1906年から100年以上も毎年グッドフライデーにホットクロスバンズを焼き、例のこの日に焼かれたホットクロスバンズは決してかびないと言う言い伝えのとおり、ずっと梁からぶら下げているそうですよ。沢山のお守りのホットクロズバンズに見下ろされならのビール、何かご利益あるかも(笑)