第188話 Chocolate concrete cake with pink custard~チョコレートコンクリートケーキwithピンクカスタード~

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イギリスおかし百科


<Chocolate concrete cake with pink custard チョコレートコンクリートケーキwith ピンクカスタード  >

 

「チョコレートコンクリートケーキ」。またの名を「チョコレートセメント」。
なんてインパクトのある名前!いかにも堅そうな名前のお菓子と言えばロックケーキを思い出しますが、それを軽く超える破壊力のあるネーミング、一体どんなものなのか気になりませんか?

これは1970年代、80年代、イギリスのスクールディナー(学校給食)によく登場したお菓子。天板で薄く焼かれ、四角にカットされたブラウニーの廉価バージョンのような姿をしています。齧ったら前歯を折ってしまいそうな名前ですが、さすがにそこまで堅いわけではありません。「チョコレートクランチ」という別名もありますが、こちらのほうが実物に即した名前です。

 

 

昔の給食に出るくらいですから作り方も材料もいたってシンプル、卵の入るレシピと入らないものとがありますが、どちらにせよ、ケーキというには固すぎ、ビスケットというにはもう少し水分が感じられる食感で、これはこれでお茶のお供には悪くないテクスチャーです。

焼き立てや、軽く温めなおした場合はもう少しソフトな食感になるので、給食のプディング(デザート)として提供されるときはここに、大抵温かいカスタードがかけられたそう。それがなんとピンク色!
チョコレートにストロベリー味のカスタード、子供たちが嫌いなはずがありません。

さて、本体のコンクリートケーキ以上に思わず目を奪われる「ピンクカスタード」と呼ばれるこのソース、バーズなどのインスタントカスタードミックス的なとろみがあるので、そこにただ色を付けたものなのかと思いきや、どうやら別物。調べてみると、パステルピンクのカスタードの正体はブランマンジェミックス、インスタントのストロベリー風味のブランマンジェの粉を牛乳で溶いて温めたものでした。要はカスタードでも何でもなく、冷蔵庫で固める前のブランマンジェ、今の感覚で言えば嘘っぽい、いかにもアーティフィッシャルな色と香りは当時の子供たちには大受けだったそう。

イギリスでブランマンジェミックスと言えばレトロプディングの代名詞。今なおスーパーの棚に並ぶ、老舗Pearce Duff’sブランドのブランマンジェミックスのパッケージ裏を見ると、材料はほぼコーンスターチで、そこにフレーバリングと色素が入るのみ。フランスのアーモンドの風味香るブランマンジェとはまったくの別物で、イギリスでブランマンジェと言えばこの牛乳をコーンスターチで固めたものを指します(イギリスのブランマンジェの歴史についてはこちらを)。

インスタントのブランマンジェミックスの詰め合わせ ☆

1847年、ハンプシャー出身のWilliam Pearce とWilliam Henry Duffはベーキングパウダーとカスタードパウダーの会社としてPearce Duffを設立し、その後ブランマンジェパウダーやジェリー、スポンジケーキの素などを次々と発売して成長を遂げます。現在イギリス国内ではブランマンジェミックスとカスタードパウダーなどごくわずかな商品が残るのみですが、中東や西アフリカはじめ、海外を拠点に今もベーキングパウダーなど広く販売しているようです。

 

 

ピンク色をしたインスタントのカスタードはさておき、このチョコレートコンクリートは作り方も驚くほど簡単で、これからの季節マグカップたっぷりのミルクティーやコーヒーといただくおやつとしては悪くないもの。繊細さやお洒落さとはかけ離れているけれど、日に日に更ける秋を感じながらこんなノスタルジックなお菓子を楽しむのもいいものです。
レシピを簡単に書いておきますのでどうぞお試しを♪

 

<チョコレートコンクリート>

1. 無塩バター100gを小さめにカットして耐熱ボールに入れレンジで溶かしておきます。

2. 薄力粉200gとココアパウダー50gを合わせてボールにふるい入れ、グラニュー糖200g(できれば微細グラニュー糖)も加えてざっと混ぜ合わせます。溶いた卵1つと①の溶かしバターを加えてゴムベラで粉っぽさがなくなるまで混ぜ合わせます。

3.  17×27㎝の長方形(or 21×21㎝の正方形)の型にオーブンペーパーを敷き、②の生地を入れてカードなどを使い表面を平らにします。180℃のオーブンで25分程焼き、すぐにグラニュー糖をお好きなだけふりかけてください。
粗熱が取れたら正方形にカットして召し上がれ☆

 

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About Author

宮城県仙台市出身☆ 2008~2012年イギリスにてイギリス文化&イギリス菓子を大吸収するかたわら、日本で主催していたお菓子教室をつづけていたところ、あぶそる~とロンドンの編集長に出会う。 現在の居は巡りめぐって宇都宮。イギリス菓子教室 'Galettes and Biscuits' にてイギリス菓子の美味しさ&魅力を静かに発信中☆ 2018年2月 美味しいイギリス菓子をぎゅ~っと詰め込んだレシピ本「BRITISH HOME BAKING おうちでつくるイギリス菓子」、2018年 12月 「イギリスお菓子百科」。2020年12月「ジンジャーブレッド 英国伝統のレシピとヒストリー」、2021年9月「British Savoury Baking 古くて新しいイギリスのセイボリーベイキング」 を出版。インスタグラム@galettes_and_biscuits

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