Donia ドニア
イギリスはイースター週末です!金曜から4連休で、その真っただ中。旅行に出かけていないなら近場で美味しいものを食べつつ、のんびり過ごすが正解。中心部の賑やかな場所でワイワイ言いながら楽しむのもいいですよね。今日はちょっと特別な大人気のモダン・フィリピン料理店のご紹介です♪
場所はロンドンのユース・カルチャーを牽引する Sohoのカーナビー・ストリート。いつも賑やかなフードコート「Kingly Court」の最上階にあります。

昨晩のキングリー・コート。
キングリー・コートといえば、昔はティーンたちに人気のファースト・フード店がひしめくキッチュ感の強い場所だったのですが、今は業界でも実力ある人気レストランの数々が登場し、毎日いろんな世代の方が集まり賑わっています^^ 中でも強豪揃いのトップフロアに2023年末、モダン・フィリピーノ「Donia」が加わってフーディーたちの話題をかっさらっております。

キングリー・コートのトップ・フロアにあります!
食通のロンドンっ子なら、「フィリピン料理の新規店」と聞いてピンとくる人も多いと思います。北ロンドンのKentish Townでヨーロッパ初のフィリピーノ・アイスクリーム・パーラーとして知られる「Mamasonsママソンズ」、そしてベーカリー「Panaderaパナデラ」を大成功させている事業主による新事業なのです!
元々のオーナーさんは、Kentish Town Roadで40年にわたって営業しているアジア料理レストラン「Bintangビンタン」の創業者家族。Bintangには私も昔よくお世話になったのですが、安くて美味しいことで地元では評判のカジュアル店です。
このフィリピン=バングラデシュ系オーナーさんが、北アイルランド経由でやってきたフィリピン人女性シェフ、フローレンス・メイ・マグラノックさんに共同経営をオファーし、現在に至っているのだとか。2017年に創業したアイスクリームの「ママソンズ」は大人気となり、その後、このデュオはラーメンをはじめ新しいコンセプトの店をどんどん立ち上げていき、ついに英国生まれのモダン・フィリピン料理というコンセプト「Donia」にたどり着きます。
キングリー・コートのお店と聞いてちょっとカラフルでポップなインテリアを想像してしまったのですが、Doniaは全く違いました。木目の落ち着いた店内。見えるキッチン。どちらかというとヨーロッパのビストロ風で一旦座るとそこがキングリー・コート内だということを忘れてしまいそう・・・。

フィリピンの食事パン「パンデサル」とハーブ・バター
さぁお料理ですが・・・正直、伝統のフィリピン料理についてはロンドン市内のレストランで何度かいただいただいただけなので詳しくはないのですが、どう見ても「ロンドンの今」を反映している! アジア風モダン小皿料理とでもいえば、ピッタリくるでしょうか。

伝統のソルト・エッグとトマトのサラダ。ソルト・エッグの塩が強い。

タイのキラニウ!美味。
例えばソルト・エッグとトマトのサラダ、フィリピン風セビーチェ「キニラウ」、豚の丸焼き「レチョン」、フィリピン流焼き鳥「イナサル」、そしてラム肉の「カルデレータ」(ピリ辛の煮込み)のパイ料理などなど。
キニラウは鮮魚のおいしさを堪能できるサラダ風の一品で、チリのバランスも良い自家製シトラス・ドレッシングも美味しい。フィリピン流の焼鳥「イナサル」は人気の一品のようで、キッチンでマリネした鶏がどんどん焼かれてテーブルに運ばれていました! 今回は試さずじまいだったので、次回のお楽しみに♡
そして注目は、英国とフィリピンが見事に融合されている「ラム肉のカルデレータ・パイ」!

美しいパイ料理♡

ソースにはチキン・レバー・パテが入っている。

サイドにポテトを♡ とても美味しい!
ラム肉を柔らかく煮込んだフィリピンのピリ辛シチュー、カルデレータがぎっしりと詰まった美しいパイ料理。これは5つ星ホテルの厨房を知るフランス料理バックグランドのフィリピン人ヘッドシェフ、ギジェルモ・ビタンガさんと、オーナーさんの共同開発で生まれたのだそう。シチューの下に柔らかなポテトが敷かれていることで、味にまろやかさが出ていたのに感動。ここでしかいただけないお料理!
デザートには、ママソンズを人気パーラーへと成長させた名物「ウベ・アイス」をぜひ。フィリピン産の紅山芋「Ube」を使った優しい味のアイスクリームは今やロンドナーの大好物です^^ ただし私たちがいただいたシュー入りのものは、シューが堅すぎて今ひとつだったので、中の美味しいアイスクリームだけをいただいてもいいのかなと思います。もちろん、歯応えのあるシューがお好きな皆さんは、こちらもあり。
ところで最近、フィリピンで生まれて北アイルランドに移住し、そこで教育を受け、ロンドンなどの都市部に再び移ってきているフィリピン・ルーツの方について知る機会があり、興味を持ちました。「はて、どうしてフィリピン人が北アイルランドに?」と。
Doniaオーナーのフローレンス・メイさんもそうですし、先日出会った全く別のフィリピン・ルーツの女性も、同じルートを辿ってロンドンにこられているんですよね。
ちょっと調べてみると、確かに2000年代から北アイルランドのフィリピン人人口は増えているようです。北アイルランド全体の人口190万人のうち、約65,000人が移民で、フィリピンからの移民は2021年の段階で5番目に多い4,500人。
これは英国全体に言えることなのですが、専門性の高い職業に関しては移民を歓迎する政策があり、例えば看護師もそのひとつです。1940年代半ばの独立以後、フィリピンの政情が不安定であることから国外へ移住する人が増えていると思われ、その中の一つがきっと北アイルランドなんですね。選ばれる理由としては、おそらくカソリックの背景を持つ人たちにとって、英国本土よりも暮らしやすいのでは?とかね(北アイルランドの宗教は、現時点でカソリックとプロテスタントが半々くらい)。推測ですが。また先陣を切って移住したフィリピンの人々が、後続の人たちを受け入れるという姿勢が整っているなど。いろんな理由が考えられます。
いずれにせよ現在北アイルランドに住んでいる約4,500人のフィリピン人のうち、1世代目と2世代目では世界の見え方も考え方も違うのだろうなと・・・
そんな背景も見え隠れしているロンドンの多国籍キュイジーヌ。移民の数だけキュイジーヌがある!
今日はフィリピンとロンドンの料理を見事に融合させたお店のご紹介でした^^