<Crempog クレンポグ>
明日2月25日(火)はShrove Tuesday(パンケーキデイ)。イースター前のレント期間が始まる前日に当たるこの日が、何故パンケーキデイと呼ばれているか~については、第29話パンケーキの章でお話ししましたが~とにかくこの日は間違いなく1年で1番イギリスでパンケーキが消費される日。
ここまで、イングランドの平たいクレープのようなパンケーキの他に、スコットランドの「スコッチパンケーキ」あるいは「ドロップスコーン」と呼ばれるふんわりタイプのパンケーキなどをご紹介してきましたが、今日はもう一つ、ウェールズ地方のパンケーキ「Crempog(クレンポグ)」をご紹介します。
スコットランドのスコッチパンケーキ同様、ケルト文化の影響を色濃く残すウェールズのパンケーキもまた、ベイクストーンあるいはグリドルと呼ばれる丸い鉄板で焼かれるもの。近頃はグリドルを使う家庭も減ってしまいましたが、今でもウェールズではオーブンではなく直火(フライパンなど)で焼いて作るパンやケーキが多く残っています。

重曹とバターミルクを使う今の時代のクレンポグ☆
イングランドのパンケーキと違い、少しふんわりしているクレンポグ。これは重曹が入るため。また、この重曹の働きを助けるために、バターミルクとお酢もよく使われます。ふんわりしながらも、スコッチパンケーキよりしっとり感を感じるのはこのたっぷり使うバターミルクのせい。ですが、重曹が簡単に手に入るようになる以前は他のイギリスの多くのケーキ同様、イーストを膨張剤として使っていました。このタイプは「Crempog Furum 」と呼ばれ、パンケーキというより、以前ご紹介したクランペットの平たいバージョン、パイクレットに似たような感じ。そして粉も、貴重品だった小麦粉だけでなく、オーツや大麦が入ることも多かったようです。

イーストタイプのクレンポグはパイクレットのようにもちっとしています☆
1800年代中盤以降になると、小麦粉に重曹が主流になり、現代のより作りやすいタイプのクレンポグがメインになります。食べ方はバターをたっぷり塗って、ゴールデンシロップや蜂蜜をかけるのが基本。普段のおやつにはもちろん、家族のお誕生日を祝うお茶の席や、シュロブチューズデイ、3月1日のSt.David’s Day(ウェールズの守護聖人聖デイヴィットの祝日) に決まって作られてきました。今でも地方によっていろいろな呼び名がありますが、クレンポグは健在。ちなみに、Cardiganshire ではPoncagau(Poncagen :複数形)、CarmarthenshireではCramoth (Cramwythen:複数形)、Glamorgan ではFfroes(Ffrosen:複数形)などと呼ばれているそうです。
ところで、Crempog(Crempogau:複数形)というこの不思議な名前はウェールズ語から来ているのですが、もともとはブルトン語でパンケーキを意味するKrampouezhに由来しており、この語がさらにCrumpet(クランペット)の語源になっているという説も。また一方、クレンポグのもう一つの呼び名Ffroesは、パンケーキを意味する古英語 froise から来ているとも。当然と言えば当然ですが、言語も食文化も相互に影響しあっているイングランドとケルト系のウェールズ、スコットランドにコーンウォール、さらに海を隔てたブルターニュ。そういえばいつぞや訪れたブルターニュのオープンエアミュージアムではグリドルでガレットを焼いていましたが、その様子がまるでウェ―ルズのキッチンのようでした。
それはさておき、明日はパンケーキデイ、今日は最高にシンプルなビートン夫人のパンケーキレシピをご紹介しますので、ヴィクトリア時代の味を試してみてはいかがでしょうか?
<Mrs. Beeton のパンケーキ>
材料: 卵1個に対し、小麦粉 1oz(約28g)、牛乳 1gill(約142ml)、塩小さじ1/8
- 卵をボールに割り入れてほぐし、小麦粉と塩、牛乳を数滴加えて滑らかになるまで混ぜます。
そして残りの牛乳を加えながら溶きのばしたら生地は完成。
(濃い生クリーム位の濃度が目安だそう) - フライパンを熱々に熱しバター少々をとかし、生地を直径12㎝位になるよう流します。4分程、裏側をこんがり焼いたら、お砂糖をふりかけてクルクル巻いてお皿にとりだします。
~ひっくり返すのは難しいから片面は焼かなくていいそうです、親切ですね(笑)
ビートン夫人のパンケーキはイングランドタイプを粉少なめにしたような感じ
・これをできるだけ熱々のうちに、レモンとお砂糖を添えて供しましょう。
・生地にレモンの皮で風味をつけたり、お砂糖の代わりにジャムを巻いても美味しいです。
・軽い食感にしたいときは、卵を卵黄と卵白に分けて泡立てて、卵白を最後に加えるといいですよ。
・卵3つ分で約3人分。
・季節は問いませんが、特にシュロブチューズデイにいただきます。
~などなど、本にはビートン夫人の細かなアドヴァイスが添えてあります。
是非お試しあれ☆
ちなみに、このビートン夫人の家政書「Household Management(1861)」にもう一つ載っているリッチバージョンのパンケーキについてはこちらに。
2件のコメント
カオルさん☆
ランチでもおやつでもなく、ワインでパンケーキの夜ご飯!
温かいキャンドルの光の中で気の置けないお友達と、かけがえのない時間ですね。
今も未来も気になることがいっぱいだけれど、時々楽しい思い出を振り返って休憩するのも大切ですよね♪
マリコさん!
私もスコットランドでパンケーキの日にスコットランド人の友達が、今日は特別だから!と言ってパンケーキの夜ご飯に招待してくれました。彼女の小さなテラスの横のキッチンで、蝋燭の光の中ワインとパンケーキの夜ご飯の楽しかった思い出が蘇ってきました!ありがとう。