第180話 Imperials ~インペリアルズ~

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<Imperials インペリアルズ>

 

前回クリスマスプディングを取り上げたEliza Actonの 「Modern Cookery for Private Families (1845)」。このModern Cookery~は、単にレシピを掲載しているだけではなく、日々の食生活に役立つ沢山の知恵と情報、例えば良い食品の見分け方や下処理の仕方、保存の方法、効率的な鍋や調理道具の使い方などなどがヴィクトリア時代の主婦の立場に立って分かりやすく書かれています。

レシピはもちろん実用的で分かりやすいものが多く、スープやお魚料理、ソースに、ピクルスまで、それぞれ章に分けてレシピが掲載されており、お肉に至ってはビーフに、子牛、ラムにポークにチキンにゲーム(鹿やウサギやキジなど)などが種類ごとに章分けされ、実に100ページ以上。



では甘いものは~というと、Cakes(ビスケット類も含む)の章はわずかに20ページほど。プディングやデザートはまた別の章にあるにしても、ちょっとケーキの割合が少な過ぎる印象。実はその理由はしっかりケーキの章の冒頭に書いてあります。アクトンさん曰く、ケーキは「sweet poisons(甘い毒)」。「リッチでヘビーなケーキは病気のもと、できることならもっと役立つレシピを代わりにのせたかったけれど、読者をがっかりさせたくもないので、いくつかのせておきます……でも、その中でもアーモンド、プラムパウンドケーキ、ブリオッシュの類なんてバターや卵がたっぷりで最高に身体に悪いですからね~」なんてはっきりとおしゃってくれています。アクトンさんのこのレシピ本は非常に好きですが、そこまで言わなくても、とここだけはちょっと反論したくなります。まぁ一理も百理もあるのではありますが。。

さて、機嫌を直してケーキの章を見てみると、やはりそこはアクトンさん。しっかり少数精鋭簡単で美味しいレシピをセレクトしてくれています。パウンドケーキにスポンジケーキ、バンブリーケーキにマデイラケーキetc…見慣れた名前が並ぶ中、今日はそこからひとつちょっと聞きなれない名の「Imperials」というお菓子をピックアップ。 このレシピ、「インペリアルズ」という名に続けて(Not very rich)と付け加えられています。インペリアルズ=特上品、だけどそんなにリッチ(バターお砂糖たっぷり)ではない…気になりますよね(笑)

 

Imperials(Not very rich.)

Work into a pound of flour six ounces of butter, and mix well with them half a pound of sifted sugar, six ounces of currants, two ounces of candied orange peel, the grated rind of a lemon, and four well-beaten eggs. Flour a tin lightly, and with a couple of forks place the paste upon it in small rough heaps quite two inches apart. Bake them in a very gentle oven, from a quarter of an hour to twenty minutes, or until they are equally coloured to a pale brown.
Flour1lb.; butter,6oz.; sugar,8oz.; currants,6oz.; candied peel,2oz.; rind of 1lemon; eggs, 4:

1パウンドの小麦粉に6オンスのバターを加えてサラサラのパン粉状にし、半パウンドのお砂糖と6オンスのカランツ、2オンスのオレンジピール、レモンの皮のすりおろし1つ分、卵4個を加えてまとめます。これをフォーク2本を使って、粉をふった天板に、2インチずつ間隔をとりながら、小さな山になるようにラフにおいていきます。160~170℃のオーブンで15~20分程、全体に薄い焼き色がつくまで焼きましょう
(poundパウンド=約453g ozオンス=約28g )

 

 

イギリス菓子を作り慣れた方ならレシピを見ただけでご想像つくかもしれませんが、そうこれはまさにロックケーキ。しかもオレンジピールやレモンの皮がたっぷりで実に爽やかな風味。かなり美味しいロックケーキです。今の時代のロックケーキには大抵当たり前のようにベーキングパウダーが入っていますが、無しでも卵たっぷりで、十分さっくりとした良い食感。
それにしても、このインペリアルズ、卵もバターもお砂糖もそれなりに入った、なかなかにリッチな配合だと思うのですが、リッチ配合のケーキにはまゆを顰めるアクトンさん、Not very richと付け加えているところを見ると、これくらいならOKということでしょうか。
いいのならたくさん食べちゃおう~なんて言いたくなるくらい、止まらなくなる危険な美味しさのインペリアルズです。とっても簡単なので、是非皆さんもお試しあれ。
まずはお試しでレシピの半量くらいで作ると、食べ過ぎず良いかもしれませんよ。

今年もまだまだおうち時間が長くなりそう。作りやすいレシピを含め、これからもいろいろご紹介していきますので、たまには息抜きにお菓子を焼いて、オーブンから漂う甘い香りに全身包まれ、焼き立てお菓子の贅沢ティータイムでご自分を癒してあげてください。
Enjoy British Baking!

 

 

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About Author

宮城県仙台市出身☆ 2008~2012年イギリスにてイギリス文化&イギリス菓子を大吸収するかたわら、日本で主催していたお菓子教室をつづけていたところ、あぶそる~とロンドンの編集長に出会う。 現在の居は巡りめぐって宇都宮。イギリス菓子教室 'Galettes and Biscuits' にてイギリス菓子の美味しさ&魅力を静かに発信中☆ 2018年2月 美味しいイギリス菓子をぎゅ~っと詰め込んだレシピ本「BRITISH HOME BAKING おうちでつくるイギリス菓子」、2018年 12月 「イギリスお菓子百科」。2020年12月「ジンジャーブレッド 英国伝統のレシピとヒストリー」、2021年9月「British Savoury Baking 古くて新しいイギリスのセイボリーベイキング」 を出版。インスタグラム@galettes_and_biscuits

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