第183話 London cheesecake ~ロンドンチーズケーキ~

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<London cheesecake ロンドンチーズケーキ>

スフレチーズケーキに、レアチーズ、しっかりしたベイクドタイプもいいけれど、ティラミスやクレメダンジュみたいなデザートタイプもいいわよね~なんて日本は昭和の頃からのチーズケーキ大好き国民。ニューヨークチーズケーキは当たり前、フランス地方菓子の真っ黒なトゥルトーフロマージュからバスクチーズケーキなんてマニアックなものまで流行ってしまう日本には及ばないかもしれませんが、イギリス国民も負けず劣らずのチーズケーキ好き。スーパーを覗けば、冷蔵コーナーにも、冷凍コーナーにも沢山の種類のチーズケーキが並んでいます。

そんなイギリスで、ふた昔程前に流行ったのが「ロンドンチーズケーキ」なるもの。そんなの聞いたこともないな~というのも当たり前、イギリスでもこのロンドンチーズケーキの存在を知っているのはロンドン周辺、イギリス南東部の人たちのみ。1950年代に登場し、60年代、70年代まではグレーターロンドン、サリー、サセックス、ケント辺りではベイカリーやスーパーでもふつうにどこでも売られていた人気のおやつだったそう。

 

 

ところでこのチーズケーキ、ご覧になっていただいてお分かりのように、さっぱりチーズケーキらしくない。四角いフレーキーペストリーまたはパフペストリー(薄い層が沢山出来るいわゆるパイ生地)の上には白いアイシングとココナッツ。中にはラズベリージャムとフランジパーヌ(アーモンドクリーム)が入っています。あるいはフランジパーヌはなしで、ジャムのみのことも。

「ん???チーズはいずこ?」

そうなんです、出生含め、謎多きロンドンチーズケーキ最大の謎が、チーズが入っていないのに「チーズケーキ」と呼ばれていること。中にクリームチーズでも入っていると思って買ったら、え~あの店員さん間違えて入れたのかしら?なんて疑ってしまいそう。。。でもこれが正真正銘50年以上前から愛されてきたロンドンチーズケーキなのです。

ラビオリみたいに見えますが、 結構大きめサイズです☆

名前の由来は諸説、と言おうか個人個人の思い込みか分かりませんがいくつかあり~上にのせられているココナッツがシュレッドチーズに似ているからとか、以前は中にフランジパーヌではなくカードチーズを入れていたから、などなど。
アーモンドやバターを使うフランジパーヌより、カードチーズのほうが手軽にしかもお安く作れたはずですから、後者のほうがいく分説得力がある気がしますね。カードチーズとラズベリージャムの入ったパイは美味しそうなので食べてみたいですし。そうそう、それにこのロンドンチーズケーキ、なんでも昔は四角形ではなく円形をしていたそう。
ロンドンチーズケーキの正体については調べれば調べるほど謎が深まるばかり、、。

 

 

いずれにせよ、サクサクのパイ生地+ベイクウエルタルト的なフィリング+たっぷりのアイシング+ココナッツといういかにもイギリス人が好みそうなこの組み合わせが、ひと時人気を博したのもうなずけます。今となってはトッテナムケーキ然り、レトロケーキの仲間入り、細々売られているのをようやく見つけ出せるかどうか、、という存在になってしまいましたが。

今探すとすると~やはり南東部、ロンドン周辺のローカルベーカリーやファミリーベーカリーと呼ばれる昔ながらの地元密着型パン屋さんや、Aldi(ドイツ系スーパー)でたまに売られているよう。あとはブルーの看板でおなじみのGreggs。イギリスに2000店舗以上も展開する一大ベイカリーチェーンのグレッグスはその地方によってこっそりローカルメニューがあり、例えばスコットランドやイングランド北部のチェーン店ならスコッチパイエンパイアビスケットパイナップルケーキ、ウエールズではウエルッシュケーキ、南東部ではトッテナムケーキに加え、ロンドンチーズケーキがあることも。ラインナップはシーズンや店舗によって変わるようなので必ず出会えるとは限りませんが、どこも一緒と思っていたグレッグスのパイや菓子パンにもこういった地方色があるのを知ってからは覗くのが楽しくなりました(^^)

 

冷凍のパイ生地でもあればとっても簡単にできるので、おうちで作ってみられるのもおすすめです。

フランジパーヌは、無塩バターとグラニュー糖、卵とアーモンドパウダーを同量ずつすりまぜればOK。お好みでビターアーモンドエッセンスやバニラ、ラム酒などで香りをつけても。
パイ生地を3㎜程度に伸ばして、ラズベリージャムとフランジパーヌを少量ずつのせ、もう一枚のパイ生地で蓋をしてからカットします。
パイ生地を先にカットしてから作る方法もあるけれど、わたしはラビオリのように一気に作ってしまいます。そのほうが上と下の生地のサイズがちぐはぐ~なんて事にならないので。その際、できれば溶いた卵で上下の生地をしっかりくっつけてあげると、焼いている間に中味が飛び出しづらくなりますよ。
焼き時間は大体180~190℃に予熱したオーブンで20分~25分、こんがり焼き色がつけばOK。あとは冷めてから、粉砂糖を少しのお水で溶いたアイシングをかけて、ココナッツを散らせば出来上がり。

 

ちょっとくらいジャムがはみ出していてもご愛敬、大きなお口でパクリとかじりつけば、なんだか懐かしい気持ちになれる、チーズは入っていなくとも、これはこれでとっても美味しいロンドンチーズケーキのお話しでした。

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About Author

宮城県仙台市出身☆ 2008~2012年イギリスにてイギリス文化&イギリス菓子を大吸収するかたわら、日本で主催していたお菓子教室をつづけていたところ、あぶそる~とロンドンの編集長に出会う。 現在の居は巡りめぐって宇都宮。イギリス菓子教室 'Galettes and Biscuits' にてイギリス菓子の美味しさ&魅力を静かに発信中☆ 2018年2月 美味しいイギリス菓子をぎゅ~っと詰め込んだレシピ本「BRITISH HOME BAKING おうちでつくるイギリス菓子」、2018年 12月 「イギリスお菓子百科」。2020年12月「ジンジャーブレッド 英国伝統のレシピとヒストリー」、2021年9月「British Savoury Baking 古くて新しいイギリスのセイボリーベイキング」 を出版。インスタグラム@galettes_and_biscuits

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